ガンのように、生命にかかわる医療において
最優先事項は「命を救うこと、生命を維持すること」であり、
それが達成された時点で“ “ 完治” と判断されるのが現在の医療の通例です。
つまり、命さえつなげばお役御免。
術後の患者さんにいかなる苦労が待ち受けようと、
医療の現場では一切関知しないのです。
しかし、心のケアを置き去りにした“ やりかけの医療"で
仮に延命はできたとしても、豊かな人生や本物の幸福へと
橋を架けることはできません。
こうして、奥様がひそかに心を痛める日々は5 年も続きました。
私がこのご夫婦に初めて出会ったのはその頃です。
これまでの経緯やお気持ちをすべて伺い、私はすぐに決心しました。
奥様の新しい「目」と「歯」を作ろう。
そしてもう一度、ご主人との人生を心から謳歌してもらおう。
そして歯科医療・口腔医療の領域を超えた「復顔」の実現へ向け、
大学病院のメンバーで特別チームを編成。
研究の日々が始まりました。
ほとんど前例のない取り組みでしたが、
誰もがこの夢は必ず叶えてみせるという一心で
ただまっすぐ、前だけを見つめて必死に進みました。